ダイレクトメールに掲載した「入試改革に向けて増加する 本格的論述問題にチャレンジしてみよう!」の問題解答です。
さて、どこから手を付ければいいのやら… ~ 公式や定型的な解法の暗記では対応できません。知識や経験を活かしながら論理的思考が求められる1題です。
4個の整数 \(n+1\) ,\(n^3+3\) ,\(n^5+5\) ,\(n^7+7\) がすべて素数となるような正の整数 \(n\) は存在しない.これを証明せよ.
大阪大学2013年の入試問題です。阪大は整数問題の出題がほぼ毎年あり、この問題のできが合否を分けることも少なくありません。難関大学ではよく出題される整数問題は、通り一遍の解法暗記では太刀打ちできず、数学的な思考が要求されます。
まず、この4個の整数がすべて素数となるような正の整数 \(n\) が存在しないことを証明するためには
「すべての正の整数 \(n\) について、 \(n+1\) ,\(n^3+3\) ,\(n^5+5\) ,\(n^7+7\) の少なくともひとつが素数でない」
ことを示せばよいんだなと考えよう。
次に「すべての正の整数について」の部分をどう考えるか?
1.数学的帰納法の利用
2.余りで分類
のいずれかで攻められそうだが、この問題の場合、数学的帰納法はどうもうまくいきそうにない。
ならば「余りで分類」でいくか…。
では、何で割ったときの余りでいけるか?
2で割った余りで解決すれば簡単だが、多分そんなに甘くないだろう。実際、
\(n=2k\) のとき
\(n+1=2k+1\) ,\(n^3+3=8k^3+3\) ,\(n^5+5=32k^5+5\) ,\(n^7+7=128k^7+7\)
となって、\(n=2k+1\) のときを考えるまでもなく これらのいずれかが素数ではないというのは どうも簡単ではなさそう。
なので、3で割った余りでやってみようか。
(1) \(n=3k\) のとき、
\(n+1=3k+1\) ???これは素数でないとは言えない。
\(n^3+3=27k^3+3=3(9k^3+1)\) おっ、これは \(3\) の倍数だから素数ではないぞ!
(2) \(n=3k+1\) のとき、
\(n+1=3k+2\) ???これは素数でないとは言えない。
\(n^3+3\) は? \(n \equiv 1 \pmod 3\) のとき \(n^3 \equiv 1\) だから、
\(n^3+3\equiv 4 \equiv 1\) となり、\(n^3+3=3A+1\) ???これは素数でないとは言えない。
\(n^5+5\) は? \(n^5\equiv 1\) だから、
\(n^5+5\equiv 6\equiv 0\) となり、\(n^5+5=3B\) おっ、\(3\) の倍数ってことだ!
(3) \(n=3k+2\) のとき、\(n=3k-1\) のときと考えた方が楽かな? でも今回は、
\(n+1=3k+3=3(k+1)\) ん?意外とあっさり。これは \(3\) の倍数。
というわけで、\(3\) で割った余りで解決しそう!
ただし、\(n\) が正の整数であることより、(1)では\(k>0\) だが、(2)(3)では \(k=0\) の場合も考える必要がある。このことを忘れると確実に減点!
(2)で \(k=0\) の場合、つまり \(n=1\) のとき、\(n^5+5=6\) となるから素数でなく問題なし。
(3)で \(k=0\) の場合、つまり \(n=2\) のとき、\(n+1=3\) となり \(3\) は素数なので、これではダメ。
ならば \(n=2\) の場合は…
\(n+1=3\) ,\(n^3+3=11\) ,\(n^5+5=37\) ,\(n^7+7=135\)
となり \(n^7+7\) が素数でない。なるほど、上の(1)~(3)でいけるなら \(n^7+7\) がなくてもいいんじゃないの?って思ったけど、そういうことなのね。
な~んてことを、試験場でいろいろ考え、さてそれでは答案を書いてみるか、ということになる。
\(n=1\) のときは別に分けて考える必要はなく(2)に入れてもよいが、そうすると(2)の場合だけ \(k=0\) の場合を含めることになりすっきりしないので、\(n=1\) と \(n=2\) の場合は先に書いてしまった方がいいかな。
では、以下に解答例を示そう。
【解答例】(下の 「 \(\ge\) 」は記号「≧」の意味です。)
i) \(n=1\) のとき
\(n^3+3=4\) より \(n^3+3\) は素数ではない.
ii) \(n=2\)のとき
\(n^7+7=135=5\cdot 27\) より \(n^7+7\) は素数ではない.
iii) \(n\ge 3\) のとき
(1) \(n=3k\) (\(k\) は正の整数)のとき
\(n^3+3=27k^3+3=3(9k^3+1)\) となり、
\(9k^3+1\) は \(1\) より大きい整数だから \(n^3+3\) は \(3\) より大きい \(3\) の倍数で、素数ではない.
(2) \(n=3k+1\) (\(k\) は正の整数) のとき
\(3k+1\equiv 1 \pmod 3\) だから \((3k+1)^5\equiv 1 \pmod 3\) で、
\((3k+1)^5=3N+1\) ( \(N\) は正の整数)と表せるから
\(n^5+5=(3k+1)^5+5=(3N+1)+5=3(N+2)\) ( \(N\) は正の整数) となり、
これは \(3\) より大きい \(3\) の倍数で、素数ではない.
(3) \(n=3k+2\) (\(k\) は正の整数) のとき
\(n+1=3k+3=3(k+1)\) となり、
\(k+1\) は \(1\) より大きい整数だから \(n+1\) は \(3\) より大きい \(3\) の倍数で、素数ではない.
以上より、どのような正の整数 \(n\) に対しても \(n+1\) ,\(n^3+3\) ,\(n^5+5\) ,\(n^7+7\) のいずれかが素数ではない、つまり、4個の整数 \(n+1\) ,\(n^3+3\) ,\(n^5+5\) ,\(n^7+7\) がすべて素数となるような正の整数 \(n\) は存在しない.(Q.E.D.)